[JIC004] 大熊盛也、斎田佳菜子、井上潤一

メタトランスクリプトーム解析によるシロアリ腸内原生生物群の主要代謝
第1回日本ゲノム微生物学会要旨集, 2007

シロアリと腸内のセルロース分解能を有する鞭毛虫原生生物との関係は共生の例として有名であり、木質バイオマスの効率的な資源化にも期待される。イエシロアリでは、水素生成細胞内小器官であるヒドロゲノソームを有するパラバサリア門の3種の原生生物のみが共生する比較的単純な構成であり、培養困難なこれら共生原生生物群集のEST解析を行って、セルロースからの主要エネルギー代謝について推定した。2000程度のクローンを解析して、セルロース分解に関わる数種の糖質加水分解酵素、嫌気的生物に見られるピロリン酸利用性の解糖系酵素、ヒドロゲノソーム内の嫌気的エネルギー生産関連酵素のホモログ遺伝子を見出した。特に、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PCK)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)のホモログ遺伝子のクローンが多く、解糖系終段階でピルピン酸よりもむしろリンゴ酸を生じてヒドロゲノソームで代謝されると考えられた。セルロース分解に関わるものを除き、これら主要代謝に関連した酵素遺伝子の多くは同じパラバサリア門のTrichomonas vaginalisのものと高い相同性を示し、本門内で単一起源と考えられたが、なかには水平伝播で獲得したと考えられる明らかに起源の異なるものも認められた。

論文番号:JIC004