[JIC007] 井上潤一、宇井定春、大熊盛也

シロアリ腸内共生原生生物のホスホエノールピルビン酸代謝と進化
日本農芸化学会2008年度大会要旨集, 81ページ, 2008

シロアリ腸内に共生する原生生物は効率的な木質バイオマスの分解者として重要であるが、その詳細な代謝は解明されていない。これまでにイエシロアリ腸内原生生物群のメタEST解析を行い、解糖系終段階においてホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PCK)によって異化代謝的にオキサロ酢酸を生成する経路を推定した。イエシロアリ腸内に共生する2種のパラバサリア門原生生物のPCKを大腸菌によって異種発現して特徴を調べたところ、Pseudotrichonympha grassii由来のPCKはHolomastigotoides mirabile由来のPCKや既知のPCKと異なり、オキサロ酢酸生成に有利であることがわかった。両者はそれぞれ異なる細菌群から水平伝搬によってPCK遺伝子を獲得したことが系統解析によって推定され、P.grassiiは進化の過程で異化代謝に優れたPCK遺伝子を獲得したと考察した。また、遠心分画によって得たP.grassiiの細胞質画分にはPCKと共に高いリンゴ酸デヒドロゲナーゼ活性が検出され、リンゴ酸を生成して水素生成オルガネラであるヒドロゲノソームに輸送し、還元力を処理していると推定した。

論文番号:JIC007